一寸先は
彼女がいる人を好きになってしまって、それ自体は悪いことではないんだろうけど、別れまえばいいのにって思ってしまうたびに悲しくなる。2人でご飯に行ったとき、相手は仕事終わりで私服に着替えてたんだけど、小指にゴツめの指輪を付けてた。そういうところを自分に都合良く深読みして、まだ好きでいたいと思ってしまう。
眠いと本が読みたくなる
私はいま、バイト先の休憩室でセブンのエビピラフを食べている。
向かいの席には同じく休憩中のバイト仲間が座っていて、わたしが食べるのを気にしない様子でゲーム実況を観ている。
これはわたしたちがただのバイト仲間で、プライベートに一切干渉しない関係性だから成り立つ空間だ。
わたしの実家では晩御飯を食べるときに一家全員で食卓を囲むという暗黙のルールがあった。どこに座るかはだいたい決まっていて、わたしは祖父の前の席だった。祖父は口を開けて咀嚼する。クチャクチャ、クチャクチャ、クチャクチャ、音を出しながら祖母の作ったご飯を食べた。そして最後にゲフッと、火を吹いたのかと思うくらいでかいゲップをして食事を締めるのである。
本人に注意はしなくても、父が祖母にそのことについて話していたのを見たことがあったので、皆思うところがあることは知っていた。わたしは当時まだ一人っ子で、権限など持っていないものだと思っていたので、咀嚼音をすごく不快に感じていたことや、それですごく腹が立っていたことなどは誰にも言わず我慢した。祖父の咀嚼音が気になるようになってからというもの、自分の咀嚼音まで気にするようになり、口を閉じて食べていても「なんて情けないんだ」と悲しい気持ちに陥るようになった。夕飯は生きるためと割り切れるものの、食前・後にお菓子を食べる際には悲しい気持ちになる。
つかれやすいこころ
隅っこで狭そうに寝てる彼に「もう少しこっちで寝ていいよ」って言ったらぐいぐいきて私の居場所がなくなりました。
男はストレート、女は変化球
ガールズバーでの立ち回りはなかなか難しく、信じては裏切られている。そもそも客を信じること自体間違っているのだ。
マンツーマンで着くときの鉄板ネタとして、「一度接客しただけのお客さんとランチへ行き、そのままホテルへ連れて行かれそうになった」という実体験があるのだが、これは客との間にそれとなく壁を作るために話すのである。一度接客しただけの客とランチへ行く自分と、年齢が倍以上離れた異性を承諾なしにホテルへ連れて行く男、両方の浅はかさが知れる。そこを理由に、わたしはこのエピソードを聞いた彼らの反応で、彼らとの今後の付き合い方についてそれぞれ考えるのだ。
つづく
湿気った日々
3連休をとっても遠出するお金がない。先方のミスで面接すらできないまま落とされた求人に、わざわざ抗議メールを送るほど余裕がなかった。週4バイトの稼ぎはお世辞にも良いとは言えず、だけどこれまでのどのバイト先より居心地がいいので、高時給の求人を見つけても辞めようとは思えなかった。
芸大を出たおかげでなんとなくのスキルは身についたが、なんとなくのスキルで自信は身につかない。自分をアピールすることが苦手で、雑な扱い方をされると確かに腹は立つが最終いつも「わたしが悪かった」にたどり着く。自身のない分野においては、初っ端から「わたしはダメだから」と下手にでてまるで売れる気がない。制作も満足に進められない今、卒業祝いに継母が買ってくれたデジタル一眼レフのおかげでギリ絶望しないでいられる。それでも今のわたしは特別になりきれずにくすぶっている、しがない23歳フリーターだ。他人にあって自分にはないものを並べ、努力の仕方もわからず「ほしい。ほしい。」と泣き言ばかり言っている。